バスケットボール・ドリーム・ストーリー

集合!

 

井上、リキみすぎだ。もっとバスケを楽しめ。仲間を信じてプレーする。お前一人で戦ってるわけじゃないんだぞ。

 

吉岡、パスもらったらすぐバイク乗って走りだすのやめろ。反則だ。そもそもどこに置いてたんだそれ。いつも気づいたらエンジンの音がして、お前がバイクと場外にいるんだ。どういうテクニックでそんなことができる?教えてもらいたいよ。

 

辻本、ファウル判定がなかったからって警察に電話するな。審判が全てだ。警察はなんでも屋さんじゃないって授業でも教えただろ。いや殺人のときはいいよ。

 

高橋、そのラーメン美味そうだな。でも試合中はポカリを飲め。塩分を摂取することは確かに大切だが、適材適所ってもんがある。その麺はどうするんだ?いやタオルにはならないだろ。食べなくていいけど食べないといけないだろ。本当に気持ち悪いなお前。

 

もうお前たちはゴミだ。諦めろ。試合終了。お疲れ様。

 

 

媚び色のペンで書いたインタビュー記事「金曜日」

― 月刊『概念』、本日のゲストは金曜日さんです。

 

金曜日(以下、金):よろしくお願いします。

 

― 今回は忙しい中わざわざインタビューを受けて頂きましたが。

 

金:いや、実際そんなに忙しくないです、言っても週1のシフトなんで(笑)

 

― なるほど、確かに週1ですが、存在感は平日3日分くらいあるような

 

金:それは褒めすぎです、確かに多くの方が「華金」なんて言葉で僕のことを楽しみにしてくれてるみたいですけど、僕なんてまだ半日前ですよ。

 

― 「半人前」みたいに言いましたね。

 

金:はい、重鎮の日曜さんからは、鼻たれ小僧の金曜で「鼻金」なんて呼ばれてますし(笑)

 

― さすが日曜さんですね。でも実際その若さで金曜日になられたということは、快挙ですよね。

 

金:正直、他の平日の方々を抑えて今金曜日として仕事ができてるのは誇らしいですね。木曜さんとか同期のスイピー(水曜日)よりも俺を評価してもらえたんだと思うと、もっと頑張らなきゃなって。

 

― 金曜日として何か気をつけていることは?

 

金:金曜ってあくまで平日なんですよ。初めは敢えて休日感をださず、16時くらいまでは他の平日以上に平日感を出します。で、皆が仕事や授業を終えた頃にパっと掌を返して休日感を出す。そしたら皆、五日間の疲労から開放されてすっごい笑顔になる。この振れ幅ですね、僕が平日感を出せば出すほど喜びが増長する。

 

― なるほど。休日への憧れは?

 

金:もちろん出世欲はあります。まだまだ経験不足だけど、もっと実力をつけたい。最近は「金曜日が楽しみなせいで木曜日まで楽しみになってきた」とか「金曜日の夜なのに土曜日の夜かと思った」って褒められたり、これ言うとまた土曜さんに怒られちゃうけど(笑)

 

― 最後に、自分を一言で表すと?

 

金:幸せへのまわり道、ですかね。ただ休みたければ学校や会社なんてサボればいい。でも、敢えて一生懸命に僕を過ごしたら、その達成感で休日や金曜の夜がもっと幸せになる。

 

― 触媒のような働きというわけですね。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

 

金:ありがとうございました。

遥か、リップクリームで書いた海

誕生日プレゼントにもらったそれが何か、彼は知らなかった。それを贈った彼の父も、どこでそれを買ってきたかは口にせず、用途も名前も知らないようだったから、自分がそれを知らないのを何も不思議なこととは思わなかった。

 

ただピカピカで、形がかっこよくて、大きくて、重くて、何か持ち手があって、そういうことで、彼の中では武器ということにして了解していた。

 

なにはともあれ、プレゼントなんて、こんな大きなプレゼントなんてもらったことのない彼は、それが嬉しくて毎日のように持ち歩いた。

 

初めは回転する刃のような部分が外にくるように持っていたが(なんか武器ってそういう持ち方のイメージあるし)、そうするとあまりにも重いので持ち方を縦に変えた。刃の部分は、高速に回転している時こそ危険だが、ゆっくりと地面に沿わせるように移動させれば何も傷つけなかった。これが優しさなのかと彼は思った。神は完全に違うとして雨を降らせた。

 

ある日、彼は珍しく店に入った。いつもは自分の街を散歩するだけだったが、なんだか張り切って隣の街まで来てしまったのだ。すると、自分が今日も持ち歩いている、あの武器がたくさん並んでいる店を発見した。看板には何かが書いてあるが、意味が別の言語を着ているため識字能力とかマジ乙な彼にはまだ理解できなかった。

 

別の種類のそれにも触ってみたいと思った彼は、店内で自分のそれと他のそれがごっちゃにならないように、わざと離れた場所にそれを置いておいた。それが恐らく、彼に幸運をもたらした。

 

店内にはところ狭しと例の武器が置かれている。店員に、この武器を触ってみてもいいかきいてみようか。いや、知らない街だし、今日は見るだけにとどめておこうか。ふいに、若い男の声がきこえた。「気に入ったのあったら言ってくださいね~」。彼にはそれが、「ガキ、戦うか?」にきこえた。

 

ヒッ

 

彼は一目散に店を飛び出した。

 

まだ使い方も知らない武器で大人に勝てるわけねー

 

えーと、どこだ、僕の武器どこだ、あった、あったあった、よかったー、なくなってたら嫌だもんねー、ふつうに嫌だよねー、てかこんなもんデカすぎだし持ち歩くとか無理じゃね?ふつう外置くよねー、でも取られる可能性とかこれなんか鍵?で固定しとく必要あるくね?ん?なんだ?これ・・・・・・・

 

そこで彼は自分のそれに、なにかシールが貼られてあるのを見つけた。

 

「駐輪禁止。この場所は駐輪場ではありません、対処が見られない場合、該当自転車を撤去することがあります。」

 

へー、これ自転車っていうんだー

 

シールには自転車に乗る人のピクトグラムが描かれていた。それを真似してみたらふつうに乗れたので帰りはそのまま自転車に乗って帰った。(15分で帰れた。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どっさり充電プラクティス

せめてお名前だけでも……

 

そう言われて初めて気づいた。

 

"名前"

 

今まで考えたこともなかった。ここでの意味に照らして言えば、呼び名、だろうか。この刀は”刀”でしかないし、この空は”空”でしかなく、この自分は”人間”でしかない。複数の人間と関わることのない人生だったから、とりわけ呼び名が必要な場面もなかったのだ。

 

名前か。この機会に、適当に、と言ってもある程度は俺の中の審査委員会が慎重に検討するわけだが、自分の名前というものを決めてみようか。自分で決めてしまえるのだから、何を名乗ってもいいわけだ。過去には素晴らしい侍がいたという。その名前を、落語よろしく(勝手に)襲名してしまおうか。

 

あるいは、こうなりたいと思う姿を、それを表す言葉そのものを名前にしてしまおうか。そうすれば、自分の名前を思い出すときに自分の信念を思い出せるし、自分の信念を思い出すときに自分の名前を思い出せるではないか。

 

たとえば強く、たとえば逞しく、たとえば美しく、たとえば荘厳に、たとえば折れず、たとえばそこに立つ、たとえば冷徹に、たとえば正義を草鞋として歩く。

 

ダメだ、少し許されればそれに付け込んで欲の穴を深く掘ってしまう。こんなにたくさんの欲など、一度に”名前”にできるわけがない。せめて一つに絞るか、しかし全てを包含した言葉さえあれば。

 

……そうだ

 

決めた、俺は、今日から

 

俺は今日からこう名乗る。

 

ビスケット混雑テクノロジー饅頭キボンヌ美(びすけっとこんざつてくのろじーまんじゅうきぼんぬび)

 

 

光はそれを知っていた

 

その時ほど透明なコップを見たことはない。ジュースを注いだ瞬間、突如そこに現れたかのような、けれどもずっとそこにあったかのような澄まし顔を彼女はしていた。ジュースのオレンジ色は、このガラスを隔てる前よりもはっきりとした色で揺れていた。

 

風が吹く。夏の風が吹く。その透明に目を奪われた私は、その透明を見つめながら、それともそれは何すらも見つめていなかったのかもしれないが、しばらくの間、息を止めてしまっていた。

 

ポヒー

 

40秒ぶりに吐いた息は、聞いたことのないような音がして、また少しオレンジ色が揺れた気がした。

 

氷を2つ、それから、カランコロンという涼しげな音を1つコップの中に沈めた。氷表面の模様までがくっきりとこの眼に表示されている。

 

4×7=13

 

あまりにも綺麗なそのグラス・ガラスの前で、私は掛け算をめちゃめちゃ間違えたのだった。

はたして本当に踏まなくてもいい水たまりか

この匂いが好きなのよね。

 

彼女は自身の背丈の3倍ほどはあろうかという本棚を見上げながら、図書館なら一発退場のボリュームでそうつぶやいた。

 

どうしてこう、地下ってワクワクするのかしら、山も、空も、東京タワーも全っ然ワクワクしないのに。高いことより低いことの方が私にお似合いだって言ってるの?

 

言っていない。言ってないよね、俺?そんなこと。世界は沈黙を続ける。

 

らY1061、らY1061、てどこよーーーー、こんな記号わかっても、広すぎて全然みつからないじゃないーーー

 

確かに、この地下書庫は広すぎる。さっき降りてきた階段、その時点でどれくらい降りたのか忘れてしまっていたが、の右横にあった扉にはF18という表記があった。つまり今は地下18階、この地下書庫全体のおよそ25パーセントもお降りてきたのだ。巨大すぎてもはやキモいというジャンルに侵入している。

 

あ!らYあった!これが、らYの400だから、きっともう一筋南にいけばあるわ!

 

やれやれ、やっとか・・・・・・。あいつが獣医を目指すと言いだしてから、もう2年はこの調子だ。トロット教授に週3回でレポートを出しているらしい。週3?売れかけのアイドルがブログを更新する頻度だ。その情熱は本物か、知らないけど燃え尽きないようにしてくれよ、その情熱だけが今この地下を照らしているのだから。

 

……らY1059、らY1060、らY1061!あった!これ!これを探してたのよ!!見て!ポン助(すけ)!これ!

 

どれどれ……。ん?なんだこれは?

 

『ライオンに敬語を使うべきか』

 

ライオンに敬語を使うべきか、これ!ずっと気になってたのよーーー

 

・・・・・・・・・・・・

は????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????

 

こいつはこんなものを探していたのか?こんなものを探すのに俺は付き合わされていたのか?あまりにも不必要すぎる、ありえない、無駄、パセリ、ダブルダッチ、眼鏡のカラバリ、機種変の広告、スプーンの歴史、氷味のアイス。

 

ライオンに敬語を使うべきかなんて、答えはもう出ているだろう。

 

本当に敬語を使うべきだったら、タイトルでライオンを呼び捨てにはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラスの車とした約束

 

今宵、月が見える丘で

 

今宵、月が見える丘で

 

ブーン

 

今宵、月がガガガガガガガガガガガガガ

 

今宵、月が丸見えの丘で

 

今宵、月がワロている丘で

 

今宵、月が適している丘で

 

今宵、月がスッキリした丘で

 

今宵、月が欠けている丘で

 

今宵、月が忘れちゃった丘で

 

今宵、月が茂っている丘で

 

今宵、月が30%増量の丘で

 

今宵、月が欠席した丘で

 

今宵、月がオワている丘で

 

今宵、月が左折した丘で

 

今宵、月が散髪した丘で

 

今宵、月が半額セールの丘で

 

今宵、月が経営している丘で

 

今宵、月が言えない丘で

 

今宵、月が新人王の丘で

 

今宵、月がメキシコの丘で

 

今宵、月が充満しちゃってる丘で

 

今宵、月が青い黄色な丘で

 

今宵、月が腰パンな丘で

 

今宵、月がキショすぎる丘で

 

今宵、月が優先されている丘で

 

今宵、月が天日干しの丘で

 

今宵、月がまじダリぃ丘で

 

今宵、月が4つご用意されている丘で

 

今宵、月がホームインした丘で

 

今宵、月がもうちょっと頑張れた丘で

 

今宵、月が神アプデされた丘で

 

今宵、月が土井(どい)と名乗る丘で

 

今宵、月がイップスでもう昇れない丘で

 

今宵、月が速すぎる丘で

 

そんな丘で、また会おう。