光はそれを知っていた

 

その時ほど透明なコップを見たことはない。ジュースを注いだ瞬間、突如そこに現れたかのような、けれどもずっとそこにあったかのような澄まし顔を彼女はしていた。ジュースのオレンジ色は、このガラスを隔てる前よりもはっきりとした色で揺れていた。

 

風が吹く。夏の風が吹く。その透明に目を奪われた私は、その透明を見つめながら、それともそれは何すらも見つめていなかったのかもしれないが、しばらくの間、息を止めてしまっていた。

 

ポヒー

 

40秒ぶりに吐いた息は、聞いたことのないような音がして、また少しオレンジ色が揺れた気がした。

 

氷を2つ、それから、カランコロンという涼しげな音を1つコップの中に沈めた。氷表面の模様までがくっきりとこの眼に表示されている。

 

4×7=13

 

あまりにも綺麗なそのグラス・ガラスの前で、私は掛け算をめちゃめちゃ間違えたのだった。